石川竜一 in PARIS |
さまざまな国籍の移民たちがひしめき合うこの場所で、 人々が吐き出すものは多種多様だ。 市の定めたゴミ収集システムには分類できないたぐいのモノと匂い があちこちにばらまかれている。
その片隅に消化された末路のモノがちょこんと横たわっている。
パリを歩くには注意が必要になるモノではあるが、
もしかしたら唯一、これらの発出人もしくは動物だけが、 パリを消化できているのかもしれない。
フランス人や夢のパリをイメージしてやってくる人々には、 その生のパリがなかなか消化できない。
だが、石川竜一にはまるでその抵抗がない。彼は虚像を見ない。
打ち捨てられたバナナの皮が彼の興味をそそる。
今年1月に起こったパリのテロ事件はフランスの移民問題と深く関 わっているが、フランスはその存在を見ようとしてこなかった。 まさに、 現代フランス社会の未消化物がテロ行為によって露呈された事件だ ったのではないか。
今、石川竜一は彼が沖縄で撮影した作品の展示をパリで始めたが、
彼の撮る写真は、 まさにテロのように個人のこころの中に爆弾を落として行く。
ただし彼の包容力がそれを破壊的なものではない何かに形を変えて いる。
パリでの展示を後にした人々が、 彼の写真を見たことによって起こる変化をどのように消化していく のか、その余波がどのようにひろがるのか、 また彼自身がパリでの撮影によってどのように変化していくのか、楽しみである。
(GALERIE NORD みえ)
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