作品がアツコバルーへ搬入された時、私は怖さに堪えていた。
しかし設営が終わり展示空間を見渡してみれば、それが「死刑囚」 による作品だと一瞬忘れてしまうほど、個人的な印象では「 素直さ」に満ちたスペースになっていたように思う。
画一化されたシステムの下に置かれた死刑囚の生活は、 刑が執行される「きたる時」の描写こそ、 例えばドラマや映画を通じて観てきたものの、 そこでは事件の凶悪さと、裏腹に描かれるのは人間味。 同じ人間の持つ表裏一体な危うさが「死刑囚」 の背負う運命のドラマチックさを際立たせていた。
だが、今回アツコバルーで開催されている極限芸術展。想像だけで は今まで追いつくことの出来なかった、 塀の中で生きる彼らのリアルな1日1日に、 作品を通じて直面する。会期が終了間近となった今は、 逆に作品そのものが彼らの時間を肯定しているのでは、 とすら思う。
エミリー