2017年8月31日木曜日

極限芸術 死刑囚は描く 展 スタッフ感想 エミリー

























作品がアツコバルーへ搬入された時、私は怖さに堪えていた。塀の中に隔離された人々が描いたが故の不透明さと、関連事件の凶悪さから目を背けたい思い、また作品から醸し出される、それらを覆いつくす程の熱量。
しかし設営が終わり展示空間を見渡してみれば、それが「死刑囚」による作品だと一瞬忘れてしまうほど、個人的な印象では「素直さ」に満ちたスペースになっていたように思う。
画一化されたシステムの下に置かれた死刑囚の生活は、刑が執行される「きたる時」の描写こそ、例えばドラマや映画を通じて観てきたものの、そこでは事件の凶悪さと、裏腹に描かれるのは人間味。同じ人間の持つ表裏一体な危うさが「死刑囚」の背負う運命のドラマチックさを際立たせていた。
だが、今回アツコバルーで開催されている極限芸術展。想像だけでは今まで追いつくことの出来なかった、塀の中で生きる彼らのリアルな1日1日に、作品を通じて直面する。会期が終了間近となった今は、逆に作品そのものが彼らの時間を肯定しているのでは、とすら思う。

エミリー

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